「浜嶋酒造」2000/02/25(第2回)

2月12日土曜日 快晴 3連休の中日ながら車も少なく順調に走ります。大分市から南西の方角に約1時間ほど山あいを走ると緒方町に到着します。
九州最高峰の祖母、傾山系の沢水が集まってくる所で水がきれいで豊富に流れています。近くには、観光名所の原尻の滝があり観光客が絶えることがありません。この清冽な大野川の副流水を井戸より汲み上げ仕込み用に使って造っているのが今回お伺いした浜嶋酒造です。
朝9:00ごろ蔵に着くと、ちょうど米が蒸しあがる少し前でした。
「こしき」からは、白い水蒸気が絶えまなく吹きあがっています。
少し時間があったので、今日初めて蔵を訪れた同行者で当店のお客さんでもある萱島さんと二人で専務兼、杜氏の浜嶋弘文さんに蔵の中を案内していただきました。浜嶋専務がまず入り口にある釜場から説明してくれました。ここは「こしき」でお米を蒸す所で大きな(直径が1、2mもあろうかと思われる)和釜が据えられていて、それに水を張り下から灯油ボイラーでお湯を沸かすのです。その和釜の上に「こしき」が載っています。
そこから少し蔵の中に入った正面に「麹室」(こうじむろ)があります。厚さが30cmはありそうな重厚な木製の扉を開くと玄関のような半畳くらいのスペースがあり、もう一つ引き戸があります。さらにそれを開けると約6畳ほどの部屋が現れます。
この部屋が麹を造るための大事な場所なのです。すでに麹造りが終わってしまいましたので、その中は掃除されて何もありませんでしたが入り口には清潔に洗われた一升盛りの「麹蓋」が臥せられていました。麹を造る時はこの中で3日ほどかけて麹ができあがります。次に「麹室」より建物にそって左に行くとその突き当たりに「槽場」があります。そこには2台の「槽」とよばれるお酒を搾る油圧の機械がその存在感を誇示するように堂々とならんでいます。ちなみにこの「槽」を今造るとなんと1000万円ぐらいするそうです。ここに「酒袋」に醪(もろみ)を入れて交互に約400〜500の「酒袋」を積み重ねていきます。
この作業だけで半日かかります。最終的に搾り終わるまで2日間という長い時間をかけてゆっくり搾るため「やぶた」という新しい機械で搾るより時間は倍以上かかりますがやわらかな酒質に仕上がりますし「粕歩合」も高く繊細で奥深い酒になります。「槽場」から左に進むと増築した別の建物があります。ここが「仕込蔵」兼「貯蔵庫」で緑色の直径1、8mx高さ2mぐらいのホーロータンクが20本並んでいます。すでに10本には新酒が入っていてそれ以外の物は現在発酵しているところです。この日は「こしき倒し」で、純米酒の留仕込みの日にあたります。蒸し米をこのタンクに入れてしまえば、もう蒸し米を使うこともありません。
次に「槽場」の右側に行くと、そこが「もと場」兼「吟醸酒の仕込蔵」になります。酒のもとを造るところで「酒母室」ともよばれます。蔵の中で一番温度変化が少ない場所です。吟醸酒の仕込みタンクが並んで上槽の時を静かに待っています。この日は気温が上昇するという予報がでていましたので、すでにタンクとタンクを囲う断熱材の間には氷が入れられていました。大吟醸のタンクは緑色のホーロータンクの中に直径1mほどの仕込みタンクが入っています。間には水が張られていて温度調節ができるようになっていますが、そこにも氷が入れられていました。さらにその横に検査室があります。ここはアルコール度数を計ったり、酸度やアミノ酸度を分析する部屋で杜氏の勉強部屋という雰囲気です。
ひとまわりするうちにちょうど米が蒸し上がりましたのでいよいよ蒸し米を「こしき」から取り出します。「こしき」の横に向かい合って二人が立ちます。ひとりは船を漕ぐ櫓のような物を持ち、もうひとりはスコップを持っています。櫓のようなものですくい易いように掘り起こしスコップですくってバケツよりちょっと大きめの木桶にいれます。下で待っている人はその木桶を担いで、割った竹を編んで簀の子のようにしたものの上に広げている布にひっくりかえしていきます。つまり米を冷やすのですが、この日の蒸し米は約400kg、運ぶだけでも大変ですがそれより掘り起こす人が一番苦労します、なにしろ二人で400kgの米を掘り起こすのですから・・・
約30枚の布に広げるだけでも1時間かかります。その広げた米をさらにひっくり返し、また広げていきながらさましていきます。
ある程度の温度まで下げたら、いよいよ仕込みタンクにいれますが二人で一組になってさました蒸し米を運びます。次々にタンクの中に蒸し米が入れられていきます、浜嶋専務は上で「櫂」を入れて均一になるように撹拌しています。最後に浜嶋専務、蔵人、萱島さん、私の4人で「櫂入れ」をしてとりあえず作業は終わりました。
この後売店の横の喫茶コーナーでコーヒーや甘酒をごちそうになり、お昼前に浜嶋酒造を後にしました。帰りの車中では、萱島さんが貴重な体験ができたことを大変喜んで今後の商売に役立てたいと言ってました。
次回お伺いするのは、3月中旬ですべてのお酒の「上槽」が終わった頃に利き酒をして今年の鷹来屋のラインナップを決めます。皆様おたのしみに!

東一のレポートは次回定期更新で。