「浜嶋酒造」2002/01/25(第22回)

 お待たせいたしました。みなさんの苦情が聞こえてきましたので、とりあえず近場ですが「浜嶋酒造」に行ってきました。というのはウソで「7号酵母の純米酒」が出来上がったと連絡がありましたので、味を試飲(みて)きました。

 1月23日、冬型の気圧配置が九州を覆ってとても寒い日でしたので、途中の山間部が通行できるか不安でしたが、積雪もほとんどなく9時頃無事に辿り着きました。

 蔵について店に声を掛けて、そのまま仕込蔵に向かうと浜嶋さんをはじめ蔵人たちが忙しそうに働いていました。ちょうど蒸し米が上がって放冷や麹室への引き込みも終わった時でしたので、手伝うこともなく搾っている最中の9号酵母の特別純米酒を飲ませて貰いました。

 いやぁ〜!旨いですね。今年もいいお酒に出来上がっています。さすがに酒質が安定してきました。このクラスのお酒は大分県でもトップレベルです。

その時の会話
わたし:アルコール度数のわりに味が太いですね。

浜嶋氏:そうなんです。この前暑かったでしょ。あれで醪が溶け過ぎまして・・・

わたし:あの時は暑かったですね。どのくらいまで温度が上がったのですか?

浜嶋氏:蔵の中で18°まで上がりました。

わたし:えっ、18°ですか。そういえばあの時半袖になりましたよ。(笑)

浜嶋氏:もうどうしようかと思いましたよ。氷を入れてもどんどん融けるし、どうし    ようもなくて・・・こんな経験は初めてです。

わたし:そうでしょう。私もあんなに暑いのは記憶にありません。それに最低気温が    10°以上で4月下旬から5月上旬の温度と言っていましたもの・・

浜嶋氏:酒屋を辞めたくなりました。(笑)

わたし:ですね。一番大事な時期なのに・・・特に大吟醸なんかが影響を受けてませ    んか?

浜嶋氏:幸い大吟醸は留仕込の直後だったので、品温が上がらずに済みました。

わたし:それは良かったですね。
  (ホントは大分弁ですが、わからないと思いますので標準語にしました。)

 そんな会話も終わって麹室に入り、引き込んだ蒸し米を床(とこ)に広げて米を冷やします。もう少しさましてから麹菌(もやし)を振り掛けるそうです。半分に仕切った方では、昨日引き込んだ蒸し米に麹菌がついて繁殖を始めていますが、それの手入れを手伝いました。

 床(とこ)に広げられて麹菌を振り掛けられた蒸し米は、その日一日床(とこ)の上で布にくるまれて麹菌の繁殖を待ちます。翌日、幅60cm長さ90cm深さ10cmほどの10kgほど入る木の箱に薄く盛ってさらに麹菌の生育を促します。その時に熱を持って固くなりますので、手で優しく揉みほぐして上下よく混ぜてやりますが、これを手入れと言います。
*)これは箱麹と言うやり方で、大吟醸などの高級酒の麹を造る時にはもっと小さい25cm×50cm×5cmぐらいの一升盛りの麹蓋(箱)を使います。

 更に一日麹室で過ごした蒸し米が麹米になって、やっと出麹を迎えます。つまり2日間かかって麹米になり麹室から出ることになります。その時に麹米は栗香と呼ばれる栗の花のような香りを発します。その香りが出て入るかどうかで出麹のタイミングを診るようです。

 麹室での仕事も終わり一汗かいたので(なにせ麹室の内部は30°以上に保つようになっていますので、ちょっと手伝っただけでも汗だくになります。)仕込蔵を出て店の横にある喫茶室で今年の新酒として発売する「7号酵母の純米酒」を利かせていただきましたが、7号酵母とは思えないほど渋みもなくて適度な厚みのあるお酒に仕上がっていました。と同時に「本醸造のしぼりたて」も利かせていただきましたが、私はどちらかと言えば、こちらの方が「アルコール添加」特有のピリピリ感もなく、素直においしいと感じました。

 それからしばらく雑談してコーヒーやお茶をいただきお昼前に浜島酒造を後にしました。やはり彼の造る日本酒(おさけ)は一本筋の通った武士のようなお酒です。