「まずは大分の蔵元さん」2000/02/10(第1回)
今回は初回ですのでまずは地元、大分県の蔵元さんより

 四ツ谷酒造場   大分県宇佐市大字長洲4130
ここは焼酎専業の蔵元さんです。私のとこからクルマで30分ほどの長洲という漁師町にあります。近くに5、6軒の造り酒屋さんがありますが実際に造っているのは四ツ谷さんともう1軒(日本酒)あるだけです。ここはわりと近いということもあり私が一番足繁く通っている蔵元さんです。大正8年創業で現当主が4代目です。
ちなみに名義人の四ツ谷シゲ子さんは4代目のお母さんです。
現在300石(一升瓶換算30000本)の年間出荷量です。
同じ宇佐市にはみなさん御存知の日本一の焼酎メーカー「いいちこ」の三和酒類がありますがここの出荷量は43万石ですのでいかに小さな蔵かわかると思います。「いいちこ」の一日の出荷量の4分の1ぐらいなのです。書いていて悲しい・・おそらく大分県で最も小さな蔵元さんではないでしょうか?小さい自慢はこのくらいにして・・・
現在4代目、四ツ谷芳文さんと5代目、四ツ谷岳昭さんが二人で仕込みから出荷までやっていますので今の製造量が限界みたいです。
いまでも多くの酒販店から問い合わせがありますが新規の取り引きができない状況です。ここの焼酎の特徴はほとんどの蔵が「いいちこ」をまねて減圧蒸溜という蒸溜法にかえたのですがこの蔵は、昔ながらの常圧蒸溜を頑なに守った数少ない蔵の一つです。(蒸溜方法の違いについては私もよく説明できないのでまたの機会に御説明いたします。
大気圧と大気圧以下での蒸溜ぐらいはわかるけど・・・)まず、ブランデーをおもわせるような香りがすばらしく、味はほのかな甘味を含んだきれいな焼酎です。某日本酒の批評家に言わせると気品のある味だそうです。蔵の中は清潔そのもので二人の息のあった仕事ぶりはさすがです。でも、時々おこられているけど・・・
というのも5代目の四ツ谷岳昭さんは昨年一月より造りに入りました。それ以前は大阪に本社がある総合電器メーカーにいましがそこを退社して大阪に実家のある奥さんともども帰ってきました。
今は一生懸命おやじさんから造りを学んでいるところです。
4代目、四ツ谷芳文さんは少しも偉ぶった所のないきさくなおやじさんです。あまり愛想はよくありませんが焼酎造りに対する姿勢は真剣そのもの研究熱心で常に品質の向上に努力しています。
昭和61年より自らが杜氏となりおいしい焼酎造りに心血を注いでいます。趣味は仕事と剣道で最近仕事が忙しくて剣道に行けないとぼやいています。主な銘柄は「宇佐むぎ」「栄華」です。
そのほかに樫樽貯蔵の「古代」や10年貯蔵の「兼八」があります。
遊びに行くと笑顔のすてきな4代目の奥様がお茶をいれてくれます。

 浜嶋酒造     大分県大野郡緒方町下自在381
浜嶋弘文さんにはじめて会ったのは7〜8年前のことです。
県内のある蔵元さんに行った時に彼が現れました。背が高くてとてもハンサムな好青年という印象が強く残りました。
その時の彼の言葉は「あと何年かしたら、自醸酒を造ります」ということでした。休場していてまた造りはじめるというけどそんなに簡単にはいかないだろうと思っていましたが彼はそれをやってのけたのです。彼はその頃酒造りの修行中でいろんな蔵を訪れては見学させてもらって勉強していたようです。
今から4年前彼は、18年休場していた蔵を復活させました。
わずか100石ですが彼の酒が生まれたのです。
明治22年創業の歴史ある蔵元さんで大正3年、九州連合品評会で1等になった当時、酒の神様としてしられた野白金一博士が名前の一文字と屋号の「鷹来屋」をあわせて酒名を「金鷹」と命名したというほどです。彼は自分の酒に「鷹来屋五代目」と名付けました。
今全体の出荷量は500石ほどですがまだ400石を桶買いに依存しています。将来的には全て自醸酒にしたいとのことです。
ことしは300石を自醸酒でまかなうそうです。
蔵は18年休場していたおかげで?ほとんど機械化されていないので手造りのよさがいたるところに残っています。その分、作業がたいへんです。「こしき」で蒸した米を桶で運んだり、「槽」という酒を搾る機械では「酒袋」にいちいち醪をいれないといけないしというふうにほとんど人の手がかかる作業ばかりです。しかし手間をかけた酒は必ず酒質にあらわれます。どこか奥深い潜んだ味があるように思います。
12日が「こしき倒し」だそうですのでその日に蔵にお伺いすることになっていますので次号で御報告いたします。酒質はというと大分県では珍しい淡麗な旨口タイプのお酒でひやで飲むのに適したものが多いようです。
「辛口本醸造」「本醸造」「純米酒」「特別純米酒」「純米吟醸酒」「大吟醸」といった異なるタイプのお酒があります。


*注 桶買い・・他の蔵で造った酒を自分のところのお酒として販売すること
   自醸酒・・自分のところで造ったお酒