「黒木本店と尾鈴山蒸留所に行く」2000/04/25(第6回)

「黒木本店と尾鈴山蒸留所に行く」
3月19日、あいにくの天気の中、別府を出発しました。なぜ別府なのと思われるでしょうから前日の18日にさかのぼってご説明いたします。

18日、私の友人で大阪と福井で酒屋をしている彼らが「宇佐むぎ」の四ツ谷酒造に蔵見学にきました。それで夜、一杯飲もうということで別府の旅館を予約していたのです。それで四ツ谷君を含めた4人で別府に泊まったのです。話は横道にそれますが、その時泊まった「湯狩荘」がすごく良かったのでご紹介します。

料理が良いことで地元では、有名なので私も話のタネにということでそこを常連としている友人に予約を入れてもらいました。3連休の初日なので飛込みで予約を入れるより友人を通した方が確実に予約できるだろうと思ったからです。読みは正解です、彼は静かできれいな離れを予約してくれました。離れは客室が3部屋と自宅ですので、静かにゆっくり話ができましたし、のんびりくつろげました。肝心の料理ですが、お魚が中心になっていて新鮮そのもので量的にも食べきれないくらいたくさん出てきました。

これで一万円ですよといったら、みんなビックリしていました。別府には有名で大きなホテルもたくさんありますが、こっちの方が断然良いねとみんなの意見が一致しました。繁華街へも徒歩5分ぐらいですし別府駅からでも徒歩10分と便利なところにありますが、大通りから1本入ったところで大きな病院の裏ですので閑静なところです。唯一の不満はお風呂が狭いことと露天風呂がないことです。

別府から10号線を宮崎に向かってひたすら南下しますと(途中から326号線で宇目町を経由した方が早いです。)約3時間30分ぐらいで高鍋町に到着します。「黒木本店」さんは街中にありまして、正面から見た感じではそんなに大きくありませんが裏の方はすごく広くなっています。

当日は、日曜日にもかかわらず、黒木社長と角上工場長が待っていてくださいました。事務所の二階にある談話室のようなところで、いろいろお話を伺いました。まず、中々の出荷調整のことや尾鈴山蒸留所のこと、そこで造られた新製品のこと、焼酎ができた後の粕を処理する施設のこと、全国的な第二次焼酎ブームのことなど意見を交換いたしました。そして、尾鈴山の新製品をきき酒させてもらいました。それから、角上工場長に蔵の中を案内していただきましたが、前にお伺いした時とさほどかわっていませんでした。

その後、黒木社長自ら運転してくださいまして、尾鈴山蒸留所へと向かいました。車で約30分ほどですが、山を1つ越えたところにあるその蒸留所は素晴らしい環境の中にあります。人里はなれた山の中で静寂が辺りを支配しています。聞こえてくるのは、谷川のせせらぎと木々の風にふかれてこすれあう音や鳥のさえずりだけです。周囲の風景に溶け合った建物は、木材をふんだんに使っています。まるで最初からそこにあったように違和感なく佇んでいます。

建物は4棟ありまして奥の2棟が貯蔵庫で手前2棟が製造所になっています。右側に「動」の世界、左側に「静」の世界と建物が分けられています。「動」の世界では原料を洗ったり、蒸したり、蒸留したりと機械による作業がある建物ですが、一方の「静」の世界では、麹室や醗酵タンクといった微生物の活躍する建物です。これは、設計士さんの発想だそうで、黒木社長も我々造る側の人間では、こんなレイアウトの発想は出てこないでしょうと言っていました。新鮮な森の空気を吸いながらおいしいお茶をいただいて尾鈴山をあとにしました。

次に向かったのが堆肥工場で来た道を帰りますが、途中「きじ」が出てきたのにはビックリしました。山を越えて「黒木本店」さんとは、違う方向に車を走らせると台地の上に何千坪という広大な工場があらわれます。工場と言ってもちゃんとした建物ではなく幅7〜8mで長さは100mはあろうかと思われる屋根だけついたものですが、それが4棟並んでいます。手前に焼酎の粕に何かを混ぜて液状にしたものをホースで広げていきます。それがむこうにつく頃には固形になるというしくみですが、詳しいことは、企業秘密なので書けません。ここに「黒木本店」と「尾鈴山」からでた、焼酎粕が運び込まれて処理されて堆肥として出荷されますので100%再利用しているということになります。ふつう処理場では臭いに関する苦情などが多く寄せられるそうですが、ここではそんな苦情も全くありません。そこがすばらしいですね!!

夜は、黒木社長、角上工場長との会食です。高鍋町で宿泊の予定でしたので黒木本店さんの方で近くのホテルを予約しておいていただきました。ホテルの近くの若者の多い居酒屋さんに行ったのですが、悲しいことにそこに来ていたほとんどの人たちはビールを飲んでいました。今時の若者は焼酎や日本酒は飲まなくなったのでしょうか?すごく、悲しい気持ちでした。こうして日本の文化が消えていくのかな?それではいけない、もっと昔からある文化を見直して欲しい!そんな夜でした。でも我々は「黒木本店」の焼酎を酌み交わしおおいに盛り上がった宴となりました。
解散してホテルの部屋に帰ったのは午前1時をまわっていました。おやすみなさい!