「みちのく漫遊記2」2001/06/26(第20回)

 前回の続きを紹介させていただきます。

「飛露喜 廣木酒造本店」にお邪魔した翌日は、会津若松を9時前に出て一路山形県の米沢市を目指します。県境に峠があるのですが、山形県に入ると雪の量が違います。九州育ちの私にとってこの時期にこんなに雪があるなんて信じられない光景です。道路の両側には2mぐらいの雪の壁があり、雪解け水がすごい勢いで流れています。天気が良いのにこれだけ水量があるのも信じられない光景でした。

 米沢市まで降りてくると360°ぐるりと見渡せば雪を冠った山ばかりで、いかにも東北の豪雪地帯といった趣です。 米沢市からさらに30分行った高畠町に目的の「うきたむ 米鶴酒造」があります。ここを訪問するのは5〜6年ぶりぐらいでしたので行き道を覚えているかどうか不安でしたが、何とか迷わずに行く事ができました。

 数年前に訪れた時は2月で、すごい積雪があったのを思い出しましたが、あの当時と事務所も蔵も変わりなく佇んでいました。今回は残念ながら造りの工程はすでに終わっていましてその雰囲気を味わう事はできませんでしたが、その代わり、できたお酒はほとんど利かせていただきました。

 その後時間があったので、天童市の「出羽桜酒造」まで出かけました。意外なほど街中に蔵があるのにはびっくりしました。そして少し離れたところに区画整理できれいに整地された場所に「天空蔵」という新しい蔵ができていました。あいにく日曜日で蔵の見学はさせて頂けませんでしたが「出羽桜美術館」だけ覗いて米沢市のホテルまで帰りました。

 翌16日は宮城県の塩竈市に向かってホテルを9時頃出発しました。山形から宮城への県境はやはり峠なのですが、昨日のように雪はありませんでした。山形県では、まだ桜は開花していませんでしたが、宮城県に降りて行くと桜は満開です。塩竈に行く途中ではないのですが、ちょっと寄り道をして柴田郡の村田町に私が東京で仕事をしていた頃の友人がいるので寄ってみる事にしました。

 彼と会うのは彼の結婚式で仙台に来た時以来ですので、かれこれ20年ぶりぐらいです。当時学校を出て就職した会社で彼と知り合ったのですが、お互いに貧乏でしたが酒だけはきらした事のない飲み友達でした。休みの日にはほとんどどちらかのアパートで酒を飲んでいました。もう十何年も会っていなかったのですが、年賀状のやり取りぐらいはしていましたのである程度の家庭の事情は把握できていますので、そんなに長い間会っていない気がしませんでした。

 彼のところでお昼をごちそうになりまして、お昼前に再び塩竈に向かって出発です。めざす塩竈の「阿部勘 阿部勘酒造店」には1時過ぎに到着しました。「阿部勘酒造」は塩釜神社の真下にあり昔から塩釜神社の御神酒を造っていたという由緒ある蔵元です。最近敷地を道路にとられたので蔵を立て直したという事です。

 敷地が道路にとられて狭い敷地がさらに狭くなったので、蔵にはいたるところに工夫が見られます。原料処理は全て3階に持ってきてそこから仕込をして行くという理想の形です。2階には仕込蔵とタンクがそんまま入る大型冷蔵庫そして杜氏さんの部屋がありますが、その冷蔵庫もすでに貯酒能力が不足し始めているという事です。そして一階に槽場と精製・濾過等の作業場、そして分析室そして向側に瓶詰めラインや瓶火入をする設備がありました。

 最後にお酒を利かせていただきまして、帰りの仙台空港に行く道順を教えて貰って蔵をあとにしました。わずか3日間だけでしたが、心に残る旅になりました。

 長い間引っ張りましたが、たいした事のない文章におつき合いくださいまして、最後まで読んでいただいた皆様には、心より感謝申し上げます。