「浜嶋酒造に行く」2004/3/10(第42回)

 2月23日に尾瀬あきらさんが連載していた「みのり伝説」のモデルになった、ライターの「藤田千恵子」さんが取材で浜嶋酒造にお見えになるというので、配達を早々に切り上げて浜嶋さんのところにお邪魔しました。なんでも今度新潮社より出版される本の取材で、一番最初に掲載する蔵元とのことです。どんな本なのかは良く知りませんが非常に楽しみです。

 午後8時過ぎに到着すると、すでに藤田さん、同行のカメラマンの佐藤さん、浜嶋さん、浜嶋さんの奥さん、そして日本酒大好きのNさんが、すでに飲んでいまして取材も兼ねての料理を召し上がっていました。その時に「大分の食材は豊かですね」と言った言葉が印象的でした。私たちが普段口にしているものは都会の人たちから見れば、けっこうな金額を出さないと食べられないようなものばかりだそうです。大分に生まれ育ったことに感謝しなくちゃ・・・

 最初にビールであらためて乾杯して「鷹来屋 大吟醸 斗瓶取り KA-1 15BY」「鷹来屋 大吟醸 斗瓶取り KA-4 15BY」の2本の大吟を飲み比べてみました。前者は軽く、後者は味のある香りの高いタイプのお酒でした。さらに「鷹来屋 純米吟醸 14BY」を冷やしたものと、それをお燗したものと飲み比べます。やはり純米はよいですね、いろんな飲み方が出来るし、奥さんの愛情がこもった料理とすごく相性が良く、いくらでも飲めます。大吟醸もそれなりに良いのですが、食中酒として飲むには、ちょっと辛い。。。

 しかしお燗酒ならこちらということで、出てきたのが「鷹来屋 純米7号 14BY」ですが、これがなかなかすばらしくて、お燗するなら7号酵母かな思わせるお酒でした。考えてみるとうちでおすすめしているお燗酒の「群馬泉」や「鷹勇」も同じ7号酵母を使ったものでなるほどなと感心しました。昔より使われていた酵母にはそれなりの訳があるのですね。もう一度見直されてもよい酵母だと感じました。

 なんだかんだと言いながら、皆で飲むお酒のおいしいこと・・あっという間に時間が過ぎてしまい、藤田さんと佐藤さんが旅館に帰ると言うので、浜嶋さんの奥さんが送っていきましたので、私も浜嶋さんが用意してくれた布団にもぐりこみましたが、その後のことは全く覚えていません。また飲み過ぎた!!

 翌日は6時過ぎに起きて、蔵で仕込の手伝いをしたのは言うまでもありません。浸漬させておいた米をこしきに入れたり(麹米や掛け米を一緒に蒸すので何層かにわけて入れます)ホースを洗ったり、その日に仕込むタンクに入れる仕込水の温度を調整したり(氷を入れて温度を下げます)水量を調整したりと仕込の準備をしておきます。ボイラーに火を入れて蒸し上がるまでの1時間ほどが朝食の時間となります。その間も藤田さんと佐藤さんは取材や撮影をこなしていました。

 朝食を済ませ、通いの藏人さん達も揃ったころ(8時半ごろ)蒸し米をこしきから掘り出します。掘り出した蒸し米は木の桶にスコップで入れてもらって、竹の簀の子の上に麻布を敷いたところに広げていきます。その熱い蒸し米をひっくり返したり、揉んだりしながら指定の温度になるように冷まします。その日は2月というのに暖かい日が続いていたこともあり、朝の冷え込みもあまりなく、思うように蒸し米の温度が下がりません。仕方ないので大型の扇風機を持ってきて、竹の簀の子1枚ごと冷ましていき、すべての蒸し米を冷やすのに2時間ほどかかりました。

 冷まし終わった蒸し米は、それぞれ麹室に運んだり、仕込タンクに入れたりして処理していきます。それが終わった頃、帰らなければいけない時間になりましたので、藏人さん達に挨拶して、取材の終わった藤田さんを大分空港まで案内するために一緒に蔵を後にしました。

 後日談:藤田さんとお会いした数日後一冊の本が送られてきました。今年一月に発売されたばかりの「杜氏という仕事 藤田千恵子著 新潮選書」という日本酒に関する本で、滋賀県の「喜楽長」(喜多酒造)という銘柄の杜氏である「天保正一(てんぽしょういち)」さんについて書かれた本でして、酒造りの中で杜氏という仕事がどういう立場にあるかをまたどんな仕事をするのかを具体的にかつ、繊細に描写している本です。この本を読めばお酒を造ることに関してなど良く理解できるお薦めの本です。

 藤田さんありがとうございました。(絶対読んでないと思うけど)