「島岡酒造」2006/7/25(第62回)

 私がその悲報を聞いたのは、ちょうど松瀬酒造さんに行っていた、2月6日の事でした。島岡さんから店の方に電話がありまして「蔵が全焼しました。つきましては、今出荷できる商品がわずかばかりあるので送りましょうか?」とのこと。

 あまりにも衝撃的でしたので、しばらく応えることもできないほどでした。ま さかあの蔵が火事になるなんて・・・幸い怪我人がないということで少しだけホッとしましたが、不安は募るばかりです。しかしこのような時に電話を差し上 げるのもご迷惑になるかと思いましたし、このまま現地に向かおうかとも思ったのですが、現場検証やら何やらでまだまだ混乱しているだろうから、それも控えることにしました。

 それから一月半以上経った3月20日にやっとお邪魔することが出来ました。突然の訪問で申し訳なかったのですが、その日の午前中蔵に伺ってやっとお見舞の言葉をお伝えすることができたのです。店の入り口には、失火のお詫びの言葉と営業を休止する旨の張り紙が貼られていました。

 ガラス戸を開けて挨拶すると専務のお母さま(元社長の奥様)が応対してくださいまして、すぐに専務の奥様と、蔵の片づけをしていた作業服姿で汚れた格好をした専務がやってきました。店の入り口や居住区付近は火事を免れたので、以前と変わりはなかったのですが、そこから一歩足を踏み入れると釜場のみが残っているだけで仕込蔵は跡形のなく焼け落ちていました。

 何とか地下の高級酒の貯蔵庫と別棟の製品出荷場は延焼を免れたそうです。しかしタンクで仕込中だったお酒やタンクで貯蔵していたお酒は、すべて駄目になったということでした。出荷までの貯蔵期間が他の蔵と違って長いので、相当な貯蔵酒があったはずですから、損害金額はどのくらいになるか想像もつきません。

 近辺への類焼もなく、蔵が焼け落ちただけで済んだことが不幸中の幸いであったと言ってもいいくらいでしょうか。蔵のまわりには建築屋さんとおぼしき工事関係の人や醸造機器関係の人がタンクの手直しをしている姿が見られました。

 その後、お昼をごちそうになりながら、今後の蔵の設備のことや方針をお伺いして「必ず今年の秋の酒造りには間に合うように蔵を再建させます」という頼もしい言葉を聞き安心して帰路に着きました。

 みなさんも是非何かの折には「群馬泉」を飲んで蔵の再興を祈願してください
よろしくお願いいたします。