「亀齢酒造に行く2008/2/10(第78回)

 2月にはいってすぐの3日、4日で広島の亀齢酒造さんと、山口の澄川酒造場さんに行ってきました。3日は日曜日でお店が休みでしたので、お昼前に出発 して、世界遺産の宮島「厳島神社」に参拝してきました。

 国道10号線を北上し、小倉東インターから九州自動車道に乗り中国自動車道〜山陽自動車道を経由して、宮島近くの大野インターまで4時間ほどかかって 辿り着きました。

 今回は事前に高速の情報を調べると、中国道や浜田道は冬用タイヤの規制が出 ていましたので、乗用車は諦めて配達の車で行くことにしました。配達用の軽ワゴン車は4WD&スタッドレスタイヤ装着なので少々の雪道でも大丈夫です。

 澄川さんにお伺いしても山陽道を戻って、一般国道を北上するよりも、中国道浜田道を経由して、国道9号線を南下する方が時間的に早いし、判りやすいと言われていましたので、そうすることにしました。

 大野インターを降りるとすぐ対岸に宮島が見えてきました。案内表示に従って車を走らせると「宮島口」なるところに辿り着きました。えっ?ここって車で行けないの???無知な私は、ずっと車で行けるところだと信じていましたが良く考えると「宮島」という島なんだから、車で行けるはずもなく(フェリーに車を載せれば行けるんだけど)諦めて、車をフェリー乗り場の近くの駐車場に止めて、わずか10分ほどの船旅を楽しみながら宮島に渡りました。

 島に着いて驚いたのは鹿が放し飼いされていることでした。奈良の公園で見たことはあるものの、宮島にもふつうに鹿がいるのは初めて知りました。フェリーの発着所から徒歩5分くらいで厳島神社に着きます。テレビでは何度か見たことはありますが、それはそれは立派な神社です。宇佐八幡宮にも引けを取らないような素晴らしい建物です。しかもそれが海上にあるということが、また凄いです。境内をひとまわり(一方通行)してから、厳島神社手前にある立派な五重塔とバカでかい豊国神社(千畳閣)を見物して、フェリー乗り場に戻りました。(後で調べると、他に見所がたくさんあったようで残念です)

 その日は宮島近くの旅館に宿泊して、翌4日に本来の目的である「亀齢酒造」さんに向かいました。蔵のある東広島市西条までは60Kmくらいですので、約1時間で行ける距離です。9時頃旅館を出て高速で西条インターまで行きます。そこから市街地方面に車を走らせると「ユメタウン」が見えてきますが、私も以前お伺いしてからは、かなり時間が経過しているので近くまで来ていることは間違いないのでけれど、どうしても道順を思い出せません。仕方ないので営業の上田さんに電話して迎えに来てもらいました。

 するとすぐに来ていただいたので、近いんだと思いついていくとわずか数百mの距離で蔵に着きましたが、その途中でやっと道順を思い出しました。蔵に着くと石井社長が迎えて下さいましたので、ご挨拶を済ませてから西垣昌弘杜氏にご案内いただき蔵を見学させていただきました。

 まずは原料処理からですが、精米は委託精米ですのでお米は指定した精米歩合まで磨かれたものが蔵に入ってきます。洗米は今年から新しい洗米機を導入したそうですが、あまり水を使用しなくても糠切れの良い洗米が出来るようになったということです。それと驚いたのはふつう洗米は前日に行うところが多いのですが、この蔵では午前3時頃から始めるそうです。真冬の深夜・・辛いですよね。

 蒸しは蒸気を入れるタイプの甑を上下で使いこなしているということです。上の甑が掛米用で、下のものが麹米用だそうで、その違いは下の甑は熱交換器で蒸気の温度を更に高め105度で蒸して、乾燥したいい蒸し米が出来るように工夫しているそうです。蒸し上がった麹米は布に包んで人力で二階に運ばれ、麹室と呼ばれる麹を育成する部屋に引き入れられます。その他の蒸し米は自然放冷というやり方で薄く広げて熱を取り、一日枯らしてから添、中、留の掛米用としてタンクに仕込まれます。

 麹室は大きく分けて2ヶ所あり、ひとつは上撰下撰用の自動製麹機のある部屋もう一つは特定名称酒用の手造りで麹を造る部屋です。うちで扱うお酒はもちろん手造りの麹を使用したものだけです。そこに今から仕込む辛口80%の麹が製麹されていました。

 西垣杜氏曰く、何故手造りの麹に拘るかというと、どうしても機械では納得できる麹が出来ないので、全ての酒造りは麹造りが基本という杜氏にとって手間暇かけて造った麹が一番だそうです。

 その後、もと場(酒母を育成させる部屋)では酵母の話を聞かせて貰いました。この藏では秋田県の新政酒造より分離培養された6号酵母の変異株601号を使って主に仕込んでいます。その他にNK酵母と言われる香り系の酵母も使われていました。それともう一つは地元安芸津の杜氏さんは高温糖化という酒母造りをするのに対して、西垣さんは但馬杜氏ですので、速醸酒母を造るのだそうです。

 本仕込は大きなものでも1200Kgで小仕込が主体です。低温の長期もろみで広島にしては長めだそうです。特に吟醸酒では、約30日にも及ぶもろみを完全発酵させてから上槽するそうです。

 槽(ふね)に関しては、藪田式圧搾機で特別にどうこうはありませんが、あまり圧力をかけすぎないようにしていました。ちょうど辛口80の上級品を搾っていましたので、少し飲ませて貰いましたが相当旨かったです。+6と辛めの仕上がりですが、純米酒ですしそれほど辛くは感じませんで、むしろ生酒特有の甘味を持った飲み応えのあるお酒でした。これは火入れをして出荷するそうです。

 最後に西垣杜氏をはじめとして、季節雇用の若い人が4人もいまして、彼らはお酒が造りたくて働いている人たちばかりなので、時間で動かず、酒に合わせて仕事をするという徹底したこだわりがあるそうです。ここまで丁寧にご説明いただきまして、西垣杜氏は仕事に戻られました。

 それから上田さんに少し離れた場所にある瓶詰場や貯酒庫を案内していただき辺りを見回すと「賀茂鶴」「福美人」「賀茂泉」「白牡丹」など有名な銘柄の煙突がまわりにひしめき合っていまして、あ〜ここは酒都西条なんだと改めて思いました。

 上田さんから「お昼でも」とお誘いいただきましたが、次の目的地までどのくらいかかるか判らないので、丁重にお断りして蔵を後にしました。

                            <つづく>