「尾込商店」 2009/12/25(第104回)

 11月29日、前日の「萬年新酒の会」でのお酒が抜けきらない感じで目が覚めましたが朝食を取るとサッパリしましたので、9時ごろホテルを出て鹿児島に向かって出発しました。ガソリンが少ないなと思いながらも、宮崎インターまでの国道で補給しそびれてしまい、でも何とか保つだろうと安易に考えたのが、のちのち後悔することになろうとは・・・

 えびのジャンクションまでは、それほど燃料計も下がらずに順調にいったものですから、ガソリンスタンドのある霧島パーキングエリアを横目に快調に走ります。ところが鹿児島空港インター付近まで来ると急速にメーターが下がりはじめ警告灯が点くようになりました。

 それでも桜島パーキングエリアなら、ガソリンスタンドがあるのでと安心して向かっていました。さすがに燃料を入れないとまずいなと感じたので桜島パーキングに入ると、何と言うことでしょうガソリンスタンドが閉鎖されていました。


 正直、相当焦りました。これはJAFを呼ぶことになるんだろうなと半分覚悟しながら、とりあえずは行けるとこまでは行かないと腹をくくって進みました。鹿児島北インターで降りれば良いものを市内を通るのが面倒なので、とにかく松山インターまで行くことにしました。もちろん警告灯は点きっぱなしです。下り坂ではニュートラルにして、登りも他の車の迷惑にならない程度に低速で走りきり、やっとの思いでガソリンスタンドに辿り着きました。満タンで55Lのタンクに53Lも入りました。(今回の反省点:ガソリンの補給は早めに)


 尾込商店さんが午後からの約束でしたので、欲深い私は事もあろうに指宿の先にある山川町の田村合名さんを目指したのです。鹿児島に着いたのが11時ごろでしたから、当たり前に考えれば無理なのに・・・・ガス欠で血迷っていたんですね。 無謀にも国道226号線を南下してしまったのです。それなのに非情にも会社はお休みで誰もいません。自業自得なので仕方ないと思いつつ、12時を過ぎようとしている時計を見つめつつ、ここから頴娃町を経由して川辺町まで1時間で行くのかしら?距離にすると40kmはありそうです。


 国道226号線を頴娃町から県道27号線に入ると、走る車はまばらでお茶畑と大根畑の間をかなりなスピードで走ることが出来ます。オマケに追い越し禁止でもありませんので、快調に車を走らせ1時ちょうどに尾込商店さんに着きました。

 蔵は仕込の真っ最中でして、当日も原料芋の処理(ヘタを切ったり、悪い所を取り除いたり)で5〜6人の人たちが作業していました。事務所に入ってご挨拶を済ませてから、今年の芋や仕込の状況をお伺いしましたが、渡邊酒造場さんと同じで芋は大変豊作で、しかも品質の良い芋が取れたということでした。仕込の方は造石はしていないが、在庫が多かったのでそれで出荷量を調整できるということでした。

 9月から始めて12月いっぱいまで、4ヶ月間は全く休みなしで仕込が続くそうです。蔵元さんは大変ですね。芋焼酎の場合、仕込の期間が芋の取れる間に限られるので、体力勝負といわれるのが良く解ります。

 話も終わって蔵を案内していただきました。2階にある一次仕込の部屋では黒麹のもろみが出番を待っていました。さらに3階の麹を造るドラムと三角棚はお休みの日でした。午後からはドラムに米が入る予定だそうです。仕込タンクでは、二次もろみが盛んに発酵しています。今では、ほとんど見ることの出来ないホーローの蒸留器では蒸留の最中でした。垂れてきている原酒を飲ませていただきましたが、良い蔵の原酒に共通して言えることですけど、荒々しさがあまり無く、蒸留仕立てでも充分美味しく飲めるということです。

 黒麹の原酒でしたが、サッパリしてキレも良く甘味もあってホントに美味しかったです。その後で貯蔵庫の白麹原酒を飲ませていただきましたが、こちらも味に厚みがあり甘味・ふくよかさが黒麹よりも強いと感じました。いずれにしても旨い焼酎であることに間違いありません。

 最後に自分で設計し昨年から使い始めたという蒸留器を見せて貰いました。こちらも蒸留中でしたが、旧式のホーロー蒸留器のように良い焼酎が出来ないので、まだまだ研究中ということでした。今年の蒸留が終わったらまた手を加えるという事でした。


 尾込さんは40歳くらいで四ッ谷君たちとも同い年なので、この世代の若手達がこれからの焼酎業界を背負っていくんだという気概を強く感じました。その一つが研究熱心でいろんな事にチャレンジしているということ、それと今の品質に満足することなく、常に上を目指して努力を怠らないことなどが挙げられます。

 彼曰くここ2・3年でやっと焼酎造りの何たるかが解ってきたような気がすると言っていた控えめな言葉が印象的でした。今後の焼酎に対する期待も大きくなったと確信して蔵をあとにしました。


尾込さん、日曜日にも拘わらず応対していただき本当にありがとうございました。