「亀齢酒造に行く」 2010/2/25(第107回)

 2月1日大谷酒造さんにお伺いしたあとは、何処に行くか決めていませんでした。今シーズンは天気が読めず、お約束をしていてもその通りに行ける保証が無いからです。山口まで戻り、東洋美人の澄川さんに行くか、広島に出て亀齢酒造さんに行くかの判断でしたが、いずれにしても天気次第だったのです。

 大谷酒造さんの訪問を終えて、とりあえず米子自動車道まで戻ってみると午前中にも拘わらず、すでに中国自動車道の広島県内千代田インター付近はチェーン規制で普通タイヤでは通行できません。なので澄川酒造場を諦め、岡山自動車道を経由して広島西条の亀齢酒造さんにお伺いすることにしました。

 途中、雪が降り出したので、慌てて岡山ジャンクションまで降りて、亀齢酒造の営業の上田さんに連絡を取ると、いま広島市内なので午後2時過ぎには会社に戻るということでしたので、2時半頃お伺いする約束をして蔵に向かいました。

 山陽自動車道なら大丈夫だろうとタカをくくっていたら、三原久井辺りでは山陽自動車道の最高地点で標高が500mほどもあり積雪する直前でしたが、なんとか峠を通り過ぎて西条インターの近くまで行くと雪も小降りになり、心配なく運転できるようになりました。

 蔵には2時半過ぎに到着しました。上田さんが待っていまして事務所に通されました。社長にご挨拶してお茶をいただき、早速蔵を案内していただきました。本社の蔵の中を通り過ぎて、ちょっと離れた賀茂鶴さんのはす向かいのところに仕込蔵は建っています。本社からは数十mの距離です。

 ここからは西垣杜氏の案内で蔵を廻ります。まず洗米機を見せていただきました。一昨年お伺いした時に導入されたもので、使い心地はとても良いようです。糠切れがすごく良いので、蒸し米の状態も良くなったということでした。

 次に二階の麹室です。まずは円形の自動製麹機、これは以前普通酒のみに使用していたそうですが、辛口八拾や萬事酒盃中が相当増えてきたことから、これらの麹はこの機械で造るようにしたとのことです。ただこれを使うまでは相当勉強をしたそうです。手造りと遜色ない麹を造れるようにしないと、機械を導入する意味がないという西垣杜氏の信念の元、徹底して研究したそうです。

 そして手造りの麹室、こちらは蔵の規模からすると、これだけの広さは必要ないんじゃないかというくらい広くて、しかも二室に分かれています。何よりも麹造りを重視する西垣杜氏らしく、熱く麹の話を語ってくれました。麹の出来は最後まで影響を及ぼすと。そして「もと場」酒母を造る部屋です。ここで添え仕込みまで行っているそうです。

 それから1階に下りて仕込蔵を見ました。基本的に辛口八拾や萬事酒盃中、普通酒は2.000kgの仕込で、それ以上のクラスは1.200kg以下の仕込となります。この藏の特徴は醪日数が長いということです。辛口八拾クラスでも30日醪は当たり前で長期低温発酵をさせてきれいなお酒を造ろうとしています。吟醸クラスともなれば40日に醪になることも珍しくないようです。

 ここに麹の良し悪しが出てくるそうで、しっかりとした麹を造れば、品音が下がっても毎日0.5位はメーターが切れていくそうです。この辺りに亀齢の秘密が隠さ
れているようです。精米80%程度でも、あれだけきれいなお酒(雑味のない)になるんですね。

 最後に槽場(お酒を搾るところ)で辛口八拾の原酒を試飲しましたが、ブラインドで飲むと、これが80%精米と全く分からないほどんのお酒でした。こんなお酒を1.785円で出すって・・反則じゃないのって思います。

 上田さんに泊まっていけばと言われたのですが、いろんな事情もあり帰ることにしました。午後4時ごろに蔵を出て、家に帰り着いたのは午後8時でした。距離にして330kmやはり広島も遠いです。


 今回は1泊2日の鳥取・広島で往復1200kmほどの運転でしたので、さすがに疲れました。

        上田さん・西垣杜氏大変お世話になりました。


 後日、萬事酒盃中の生酒を送っていただきましたが、これがまた素晴らしい、思わず唸ってしまいました。