「開運 土井酒造場」 2011/3/25(第118回)

 名古屋で宿泊した翌3月7日、知り合いの酒販店さんにお邪魔させてもらうべく一路静岡へ・・・夜は、その酒屋さんの案内で静岡の街で一杯飲みました。当然、名所「おでん横町」にも顔を出しました。しかし静岡は大きな街ですね。

 翌8日は、土井酒造場さんのある掛川まで電車で移動して、タクシーで藏まで行きました。午前中にお伺いする約束をしていましたので、午前10時前に藏に到着するといらっしゃらないはずの土井社長が・・なんでも河村先生*)がお見えになって県の鑑評会に出品するお酒を利いていらっしゃるとのこと。・・で、それが終わるのを待っているということでした。

 すぐに藏人の榛葉(しんば)さんを呼んでいただきまして、彼に案内していただきました。榛葉さんは、藏にお勤めして10年ちょっとということでしたが、私ははじめてお会いしました。

 まずは精米所から仕込みの順番に丁寧に説明していただきました。最終工程の槽場ではちょうど最後の大吟醸(全国の鑑評会用)を槽で搾っている最中でして、槽口から垂れている、まさに搾りたてのお酒をラッキーにも利かせていただくことが出来ました。私の判断ですが、香り味わい共、申し分ないものでしたので、今年も金賞受賞間違いないものと確信しました。予想が外れたらごめんなさい。

 土井さんでは使用する酒造好適米のほとんどが山田錦ということもあり、山田錦に関して言えば、プロ中のプロですが、その土井酒造場さんでさえ、今年の造りは米の影響で難しかったそうです。前半は米が割れて融けにくく、メーターだけ切れて(酒の比重が軽い)味が出なかったそうですので、それを修正しながらの酒造りだったそうで中盤以降は通常の状態に持って行けるようになったということでした。

 この辺りの話は、蔵元さんに伺わないとなかなか聞くことの出来ない話なので、大変勉強になります。また酵母のことや新しい酒米の話など、いろいろ聞かせて貰えるので蔵元訪問の必要性を痛切に感じます。


 一通り案内していただき母屋に戻ると、今度は弥一専務と交代して、今年のお酒を利かせていただきました。いずれも非常にレベルの高いお酒で安心してお客様にお薦めできるお酒だと改めて感じました。特に今年はじめて造った「特別純米雄町」は雄町らしさが出ていまして良かったです。残念ながらタンク1本の仕込みと言うことで、すでに完売したらしいです。

 あとは静岡県の酒造好適米「誉冨士」で仕込んだお酒も利かせていただくことが出来ました。このお米は県酒造組合の10数軒で仕込んでいるということでしたが、お米自体の出来の善し悪しがあり、一概に評価できないというお話しでした。

 同時に県の鑑評会用の大吟醸と純米大吟醸も一緒に利かせて貰いましたが、どれも素晴らしい出来映えでした。ただそういうお酒ばかりが集まるところでは、香りがおとなしいだけに「損するな」という印象でした。利き酒とは名ばかりで、電車なので遠慮なしに飲ませていただきました。(だってこういう時以外、大吟醸の斗瓶取りをくらべて飲むことなどありませんから)


 ちょうどお昼になったので、帰りの都合もあり藏をあとにすることにしました。
再び榛葉さんにお願いして掛川駅まで送っていただきました。


     土井社長・弥一専務・榛葉さん大変お世話になりました。


*)河村伝兵衛氏:元・静岡県沼津工業技術支援センター研究技監。静岡酵母の研究開発と、その醸造指導に尽力し、静岡県産酒の品質向上に多大な功績のあった方。

                       次回は「黒木本店」です。